
愛と任務の狭間で、君を盗んだ🕶💼
「そのバッグ、まだ使ってるんだね」📍
渋谷の交差点で、彼女を見つけた瞬間、時間が止まったように感じた。
ベージュのコート、黒のフェンディ スパイバッグ。
全部、あのときのままだった。
「……あなたこそ、まだ尾行してるの?」
睨むように笑った美咲の瞳に、俺は一瞬、言葉を失った。💼
俺は公安の調査官。
彼女は、かつて接触を命じられた「対象」だった。
極秘情報の流出元としてマークされていたが、接触するたび、彼女に惹かれていった。
本来なら報告書に「接触成功」とだけ書けばよかった。
でも、俺はそれ以上のことをしてしまった。
恋に落ちた。☕️
「最後の任務、まだ終わってないの?」
美咲は、わざとらしくバッグを撫でながら言った。
そのバッグには、過去に俺が仕掛けたマイクが隠されている。
でも今はもう使えない。
壊したのは、他でもない俺自身だ。
「終わらせに来た」
俺はゆっくりと答えた。📻
ふたりの関係は、交わるべきじゃなかった。
任務と感情、その境界はいつも曖昧で、危険で、魅力的だった。
俺は命令違反で左遷され、美咲は突然、姿を消した。
その後、彼女が中国企業と接触していたという情報が流れ、再び“ターゲット”になった。
でも、俺の中では彼女は“愛した人”のままだった。🕶
「どうして私に近づいたの?」
美咲の声は、どこか震えていた。
「最初は任務。でも……」
言いかけて、俺は言葉を飲み込んだ。
「でも?」
「今は違う。君に……盗まれたから。心を」😢
沈黙が訪れた。
彼女は少しだけ目を伏せた後、バッグの中から小さな封筒を取り出した。
中には、俺が美咲に送った音声記録。
笑い声、話し声、呼吸。
そして――最後に俺の「愛してる」が入っていた。
「あなたの“声”を、ずっと持ってた」
「……それが、あのバッグの“スパイ”?」
「そう。盗んだのは、お互いさま」📦
彼女が背を向けようとした瞬間、俺は手を伸ばしてその手を掴んだ。
「美咲、君をもう二度と見逃したくない」
「だったら、今度は任務じゃなくて――」
「本気で来て」
彼女の笑顔は、まるで過去を赦してくれるように優しかった。
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