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ひと言小説「遠い笛の音」

「懐かしい音色」

🌌 冬の夜、静かな路地を歩いていると、どこからか笛の音が聞こえてきた。
その音は冷たい空気を裂くように澄んでいて、どこか懐かしさを感じさせるものだった。

👣 私はその音に引き寄せられるように足を進めた。
音の出どころを探しながら曲がりくねった路地を抜けると、目の前には草木に覆われた小さな空き地が現れた。

その場所は忘れもしない、かつて友達と一緒に作った秘密基地の跡地だった。

🎵 笛の音は、そこで止んだ。
誰が吹いていたのか見当もつかない。
だが、不思議と寂しさはなく、むしろ心が温かくなった。

👦 昔の記憶が蘇る。
夕暮れ時、友達とここで遊んだこと、夢中になって基地を作り上げたこと。
笑い声やふざけ合った瞬間が、今でも鮮やかに胸に浮かぶ。

🌿 足元を見ると、土に埋もれかけた古びた笛が転がっていた。
そっと拾い上げると、手のひらに伝わるひんやりとした感触がどこか心地よい。

🍃 冷たい風が吹き抜け、私はその笛を胸に抱いた。
そしてもう一度あたりを見回すと、基地の跡地には誰もいなかった。
ただ、空には星が瞬き、あの頃と変わらない静寂がそこにあった。

🎶 私は微かに微笑むと、笛を懐にしまい、再び夜道を歩き出した。
遠くで聞こえる笛の音が、また静かに響き始める気がした。

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