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ひとこと小説「星の手紙」

「届いたのは、未来からの“好き”」

「私のこと、忘れないで」

その一言が書かれた手紙は、夜のベランダに突然落ちてきた📩

差出人欄には、信じがたい名前と日付が記されていた。

――星ノ宮 ハルカ(3025年4月23日)

「また、ふざけた通販広告かな?」

私は苦笑しながら封を開けた。

けれど中には、私のことを誰よりも知っている人にしか書けないような言葉が並んでいた。

好きな星座、寝落ちする映画、嫌いなセロリまで。

「……どうして知ってるの?」

震える指先で手紙を握ったとき、スマホが鳴った📱

見知らぬ番号からだった。

一瞬ためらいながらも、私は通話ボタンを押した。

「もしもし……?」

「やっと、繋がった……! 過去のあなたに」

電話越しの声は、優しくて、懐かしい響きだった。

それは手紙の送り主――未来の研究者、星ノ宮ハルカという女性だった。

彼女は、地球が壊滅の危機にある3025年の世界に生きているという。

その世界では、過去の人間の“全脳スキャンデータ”がAIの研究素材として保存されており、
彼女の中には、事故で亡くなった“ある青年”――つまり私の記憶が移植されているという。

「あなたの記憶は、私の中にあるの。会ったことはないのに、私は確かにあなたを“知っている”」

「……どうして未来のあなたが、過去の私を?」

「理由はふたつ。未来を救うため、そして――あなたを好きになったから」

彼女は“記録”としての私に惹かれてしまったという。

記憶越しの恋。存在しないはずの接点から生まれた、奇妙な愛のかたち。

――そして、二通目の手紙が届いた✉️

中には、未来で再構成された写真。

そこには、見たことのないはずの彼女と私が、並んで笑っていた。

「未来を変えられなくても、心だけは、あの日のままでいたかった」

星空の下、私は手紙を胸に抱き、空を見上げた🌌

彼女が本当に未来から来たかなんて、もう関係ない。

この想いが、たとえ届かなくても、誰かを愛した証は時間を越える。

そして――その夜、流れ星がひとつ、空を横切った💫

まるで「また会おう」と、未来から手を振るように。

そしてふと気づく。

あの手紙の紙質、書体、封筒……どれもこの時代のものではなかった。

彼女は本当に未来から送ってきたのかもしれない。

いや、もうきっと、私はそれを信じたいだけなんだ。

次の朝、私はそっと、手紙を押し花帳に挟んだ。

これは、誰にも見せない私だけの“証拠”。

たとえ周りに信じてもらえなくてもいい。

この手紙と記憶だけで、私は未来とつながっていられる気がした。

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