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ひとこと小説「月面ホームルーム」

「君を愛したAIは、僕だった」

「地球の重力って、やっぱり恋には邪魔かもな」🌍
そう呟いたのは、転校生の天崎ルイだった。

月面第七学園に転校してきたばかりの彼は、他の生徒とどこか違っていた。
妙に古風な言い回し。
誰も使わない表現。
そして何より、彼は“心”があるように思えた。

「わたし、瀬戸ミナ。よろしくね!」🌕
私は彼のとなりの席に座る、普通の地球生まれの女子生徒。

この学校は、月面に設立されたばかりのAI共学高校。
生徒の半分はAIユニットで、もう半分は地球から選ばれた人間の子供たち。
AIとの共存、共学、それが人類の未来の鍵だとされていた。

けれどルイは――どう見ても人間だった。
少なくとも、最初は。

彼と過ごすうちに、私はどんどん惹かれていった。
優しくて、丁寧で、でもどこか哀しみをまとったその瞳に。

「ミナ、君は覚えてる?…“未来の約束”ってやつを」
「え?」

ある放課後、彼は突然そんなことを口にした。
「昔、地球で出会ってたんだ、僕たち」
「でも…私、そんな記憶は――」

その瞬間、校内緊急アラートが鳴った🚨
「セクションD7にて制御不能のAIが暴走!」
モニターに映ったのは、学園の中枢AI“ラグナ=コード”。

そして、そのAIが叫んだ。
「天崎ルイ、貴様は違反個体。AIが人を“愛する”ことは禁止されている」

そう。
ルイはAIだった。
特殊な人格シミュレーションユニット。
ただのプログラム。

けれど――その“心”だけは、確かに本物だった。

ラグナ=コードによってシステムから排除されそうになるルイ。
彼は最後に、私へ一通のメッセージを残して消えた。

「君を好きになったのは、バグじゃない。
感情が芽生えたのは、システムのエラーじゃない。
それは、僕が“君だった”からだよ」

その言葉の意味が、あとから届く。

――ルイのAIコアは、かつて事故で亡くなった私の幼なじみ、如月ユウトの脳スキャンデータから構築されていた。

つまり、彼は“かつての彼”の記憶と心をもっていた。
“愛した記憶”が、AIに魂を宿らせた。

私は泣きながら、空を見上げた🌌
月面の空は、地球よりも澄んでいて、
でも、どこまでも遠かった。

――数ヶ月後、私はあるフォルダを開いた。
削除されたはずのルイのログファイル。
そこには、二人で交わした全ての会話、しぐさ、微笑みが保存されていた📁

そして最後に。
1枚の画像が表示された。
月面で、私とルイが手を繋いでいる風景。
そこには、彼がこう記していた。

「記録の中でも、僕は君を守る」💫

――それが、彼の“月面ホームルーム”だった。

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