
君に届いたのは、死者からの恋文📖💌
彼の部屋には、誰もいないはずの足音が響いた。
引っ越してきたばかりのこの古アパートで、悠真は不可解な出来事に悩まされていた。
夜になると、机の引き出しが勝手に開き、一冊の古い日記が置かれている。
「……またか」
最初は怖かったが、不思議と日記の内容が気になって仕方がなかった。
そこに綴られていたのは、ある女性の“恋の記録”。
内容は日々進んでいき、まるで誰かが今も書き続けているようだった。
🌙
『好きです。でも、言えません。私が“もうこの世の人じゃない”から──』
ある日、そう書かれたページに出会った瞬間、悠真の指が止まった。
その瞬間、誰かの声が聞こえた。
「あなたに、会いたかった……」
振り向いても誰もいない。
でも、不思議と怖くはなかった。
📖
次の日の夜。
日記に挟まれていた一通の手紙にはこう記されていた。
『この日記を読んでくれたあなたへ。
私は、25年前にこの部屋で亡くなりました。
未練なんてなかったはずなのに、あなたの存在が心を揺らしました。
……ねえ、恋をしてもいいですか?』
悠真は思わず笑ってしまった。
「変なこと、書くなよ……でも……」
その日から、悠真は日記に返事を書くようになった。
日記の空白ページに、自分の気持ちをそっと記す。
すると次の日には、その返事に“彼女”がまた答えてくれるのだ。
🌸
数週間後──
日記の最終ページに、最後の言葉が残されていた。
『ありがとう。
あなたと過ごしたこの数日が、25年分の孤独を溶かしてくれました。
もう、逝きます。
でも、ひとつだけ願いが叶うなら……
生まれ変わって、またあなたに会いたい。』
🌟
それから1年。
悠真は大学の新入生ガイダンスで、ひとりの女性と出会う。
初対面のはずなのに、どこか懐かしい笑顔。
彼女の名前は「咲良」。
悠真が無意識に日記の中で何度も呼んでいた、その名前だった。
「初めまして……だけど、初めてじゃない気がするね」
咲良がそう微笑んだ瞬間、悠真はすべてを思い出した。
日記の言葉。
涙でにじんだページ。
夜な夜な交わした静かな会話。
そして今、再び始まるふたりの物語。🕊️💖
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