ひと言小説「見知らぬ傘」

「戻った傘」

通勤ラッシュの中、電車に傘を置き忘れた。
黒いシンプルなデザインで、どこにでもあるような傘だが、自分には大事なものだった。

「まあ、仕方ないか」と自分を慰めつつ、その日は傘なしで帰宅した。
そして次の日、同じ時間、同じ電車の同じ車両に乗った。
もちろん、傘はもうないだろうと思っていた。

だが、驚いたことに、昨日自分が座っていた席の前にその傘があった。
間違いなく自分の傘だ。
取っ手についた小さな傷や、少し剥げたペイントが証明していた。

「誰かが拾って戻してくれたのかな？」🤔 そう思うと、少し心が温かくなった。

次の駅で降りる準備をしながら、その傘を手に取った。
だが、取っ手に違和感を覚えた。 何かが巻き付いている。

よく見ると、それは白いメモだった。
そこにはこう書かれていた。

“昨日は雨が強かったですね。 おかげで、この傘で助かりました。 今日も雨です。 どうぞ、ご自由にお使いください。”

見知らぬ誰かからの感謝の言葉。
思わず笑みがこぼれた。😊

その日、雨が降り続ける中で、その傘を差しながら、見知らぬ誰かと繋がったような気がした。
小さな優しさが胸を温めた。☂️✨