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ひと言小説「海辺の写真」

「遠い光」

砂浜を歩いていると、波打ち際に一枚の写真が打ち上げられていた📷。

手に取ると、そこには夕焼けに染まる知らない街の風景が映っていた。

赤い屋根の家々が並び、その先には一本の灯台が立っている。

見覚えのないその場所に、なぜか胸がざわついた。

写真の裏には、かすれた文字で「約束の地」とだけ書かれていた。

まるで誰かが私に宛てたような気がして、その日からその風景を探す旅が始まった。

訪れた街々で写真を見せるたび、地元の人々は首を傾げるばかりだった。

それでも諦めきれず、地図を広げ、情報を集め続けた。

数年が過ぎ、旅の熱が薄れた頃、たまたま入った港町のカフェでその風景を見つけた。

壁に飾られた絵葉書の一枚。

それは、まさに写真に映る場所だった。

店主に聞くと、それはこの町の外れにある灯台だという。

急いで向かった先には、確かに写真そのものの風景が広がっていた。

灯台の根元に立ち、写真をもう一度手に取る。

その瞬間、裏に隠れていた別の文字が浮かび上がった。

「あなたが来るのをずっと待っていた。」

その言葉に心が震えた。

振り返ると、誰もいない風景に夕陽が染み込んでいく。

私は静かに写真を胸にしまい、遠い光に手を伸ばした。

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