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ひとこと小説「夕焼けの約束」

「叶わなかった誓い」

丘の上に続く坂道を駆け上がると、目の前には燃えるような夕焼けが広がっていた🌇。
私は胸を押さえ、必死に呼吸を整えながら辺りを見渡す。

「……間に合った」

高校最後の夏。
あの夕焼けの下で、彼と交わした約束——

「十年後の今日、またここで会おう」

遠距離恋愛になった私たちは、お互いの未来を信じ、この場所を待ち合わせ場所にした。
だけど、次第に連絡は減り、やがて自然と途絶えた。

——でも、私は諦めきれなかった。

「きっと、彼も来てくれる」

そう信じて、十年という月日を超え、この場所に立っている。

けれど、どれだけ待っても、彼の姿は見えなかった。
胸の奥が苦しくなる。

「……やっぱり、もう忘れられたのかな」

そう呟いた瞬間、背後から声がした。

「すみません、この場所に来る予定だった人を知りませんか?」

振り向くと、そこには知らない男性が立っていた。

「彼の家族の者なんですが……彼は、数年前に事故で……」

頭の中が真っ白になった。
言葉が出ない。

「彼の部屋を整理していたら、この場所のメモが出てきて……」

彼は約束を忘れていなかった。
けれど、もう二度と会えない。

夕焼けが滲んで、涙が頬を伝う。

「……バカだなぁ」

だけど、そんな彼を好きになったことは、今でも誇れる。

——約束は果たせなかったけれど、この空の下で、私は彼を想い続ける。 ———

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