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ひと言小説「最終バスでの再会」🚌🌃

「最終バス」

夜の街に冷たい風が吹き抜ける中、最終バスがやってきた。

疲れ切った体を引きずるように乗り込むと、車内は思ったよりも混んでいて、空席はほとんどなかった。

一番後ろの席に目を向けると、そこには懐かしい顔があった。
「…遼?」
声に出す前に彼がこちらを振り返る。

それは確かに、高校時代の親友だった遼だ。
10年以上も会っていなかったが、その面影はそのままだった。

「あれ、千佳か?」
彼もすぐに私に気づき、驚きと笑顔が混ざった表情を浮かべる。

懐かしさが胸を満たし、私は彼の隣に座った。

互いの近況を話しながら、バスはどんどん終点に近づいていく。
仕事のこと、家族のこと、昔の思い出――会話は途切れることがなかった。

やがてバスが終点に到着する。

降りる時、彼が言った。
「俺、ここで降りるけど、千佳は?」

少し戸惑った。
このバスの終点に来るのは、普段ならあり得ない。
終点の先には何もない郊外の街だ。

「…そうだね、私もここで降りる。」

なぜそんな答えをしたのか、自分でも分からなかった。
バスを降りると、そこには懐かしい景色が広がっていた。
それは、私たちが一緒に通った高校の最寄り駅だった。

「不思議だよな。こんな偶然、あるんだな。」

彼が呟く。

その声が夜風に溶ける。
ふと、胸の中に静かな暖かさが芽生える。

最終バスでの再会が、私たちの記憶の旅を再び始めさせたのだ。

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