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ひとこと小説「最後の雪景色」

「白く染まる朝に届いた手紙」

朝、窓の外を見ると雪が降り始めていた❄️。
白い粉雪が静かに街を覆っていく。

ポストを覗くと、一通の手紙が入っていた。
差出人の名前を見て、心臓が跳ねる。

「……由紀?」

彼女の字だった。
封を切ると、淡い青色の便箋が現れる。

『ごめんね。私、もう行くね。
あなたの優しさが、逆に苦しかった。
でも、最後にもう一度だけ、あなたと見たかったの。
この雪景色を——。』

冷たい風が吹き抜け、指先が震える。

一昨日、彼女は何も言わずに去った。
理由も告げず、ただ微笑みを残して。

彼女の部屋を訪ねても、もう誰もいなかった。

——なのに、どうして?

急いで家を飛び出し、白く染まる街を駆ける🏃‍♂️。
彼女の好きだった並木道、雪が降るたびに一緒に歩いた橋の上。
でも、どこにもいない。

やがて、足が止まる。

駅のホームに、彼女がいた。

——いや、違う。

それは、彼女とそっくりの誰かだった。
目が合う。
けれど、彼女のような温もりはなかった。

電車が来る🚆。
人波に紛れて、その姿は消えた。

手の中の手紙が、ふわりと風に舞う。

雪に溶けるように、それは静かに落ちていった。

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