
「電車の席」
毎朝、同じ電車の同じ席に座る彼がいた🚃。
窓際で、いつも文庫本を手に静かに読んでいる姿が印象的だった。
私は車内が混雑していない限り、自然と彼が見える位置に座ることが多かった。
けれど、声をかける勇気はなかった。
そんなある日、彼と目が合った。
一瞬、彼の瞳が微笑んだように見えたけれど、何も言わずに次の駅で降りていった。
振り返ることもなく、彼の背中は人混みに紛れて見えなくなった。
私は少し気を落としながら、その場に座り続けた。
ふと、彼が座っていた席に視線を向けると、文庫本が置き忘れられているのに気づいた📖。
そっと手に取り、開かれたページを目で追う。
そこには、次のような文字があった。
「出会いは偶然、再会は運命。」
胸がぎゅっと締め付けられるような感覚を抱きながら、私は本をそっと閉じた。
そして、また同じ時間に同じ電車に乗る日々が始まる。 彼との再会を密かに願いながら。
コメント