
SNS言葉が紡ぐ物語
放課後の教室に、夕焼けが差し込んでいた。🌇
机に広げたスマホの画面には、見慣れたSNSのタイムラインが流れている。
「おい、見ろよ。“ほんmoney界隈”また盛り上がってる」
隣の席で声をかけてきたのは、幼なじみの悠斗だった。
彼はいつも流行りの言葉に敏感で、クラスで最初に新しいスラングを使い出すタイプだ。😏
そのせいで、みんなからは「界隈案内人」なんて呼ばれている。
「ほんmoney、って結局どういう意味なん?」
私は首をかしげながら聞いた。
悠斗は笑って肩をすくめる。
「“本当にそう”って意味で使うんだよ。わかる? “マジで”みたいな感じ」
スマホ画面には、同世代の誰かが投稿した短い一文が流れていく。
《テスト終わった解放感、ほんmoney》
《推しの笑顔で生きてる、ほんmoney》
私はクスッと笑った。😂
シンプルなのに、心にストレートに響く言葉だと思った。
その日から私は、気づけば界隈の言葉を意識して使うようになっていた。
たとえば、ノートを忘れて落ち込んでいるとき、悠斗がさりげなく余分なノートを差し出してくれる。
「おまえのそーいうとこ、ほんmoney」
なんて冗談混じりに言ったら、彼は顔を赤らめて、照れくさそうに笑った。☺️
SNSでしか生まれないと思っていた言葉が、現実の空気をほんの少し変える。
それが、不思議でくすぐったい感覚だった。
数週間後。
文化祭の準備が佳境に入り、クラスはピリピリしていた。😓
ポスターのデザインを巡って意見が割れ、みんなが言い合いをしていたときだ。
悠斗がぽつりとつぶやいた。
「みんな、この瞬間だって、ほんmoneyじゃね?」
一瞬、沈黙が流れた。
でも次の瞬間、誰かが笑い出す。
「そうだな、いま青春してるって感じ!」
「ケンカも含めて、ほんmoneyだわ」
張り詰めていた空気がふっと和らぎ、みんなの表情に笑顔が戻った。😌
たった一言のスラングが、場を変えた瞬間だった。
文化祭当日。
教室の前に飾られたポスターには、大きな文字でこう書かれていた。
《青春界隈、ほんmoney》
私はポスターを見上げながら、悠斗の横顔をちらりと見た。
彼は照れくさそうに後頭部をかきながらも、誇らしげに笑っていた。
胸の奥で、なにか温かいものが膨らんでいく。💓
たった数文字の流行語に、友情も恋心も、未来への希望さえも乗せられる気がした。
「なぁ、これからもさ。
オレたちの“界隈”を、更新していこうぜ」
悠斗のその言葉に、私は大きくうなずいた。
そして心の中でつぶやいた。
——ほんmoney。
その後、SNSのタイムラインで「ほんmoney界隈」はますます広がっていった。📱
全国のどこかにいる知らない誰かが、同じ言葉を使って気持ちを共有している。
けれど私にとっての“界隈”は、やっぱりこの教室で、悠斗と笑い合える時間だった。
誰かが作った流行語が、私たちの青春を鮮やかに彩っていく。
数年後、きっとこの言葉を聞けば、夕焼けに染まった教室と、文化祭の熱気を思い出すのだろう。🌆
そして私は、その思い出を胸に抱いて、新しい界隈を探し続けるに違いない。
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