
「遠い日の呼び声」
霧の立ち込める道を歩いていた時、不意に声がした。
「ここに来るなんて珍しいね」
振り返っても、誰もいない。
けれどその声には聞き覚えがあった。
胸の奥がざわつく。
あの声は、まるで昔の自分に似ていた。
中学生の頃、夢中でノートに未来の自分を描いていた日々を思い出す。
小さな声で、「絶対に成功してみせる」と誓っていたあの頃の自分の声と同じだ。
「まだ間に合うよ」
再び声が聞こえた。
目の前には、道が二手に分かれている。
片方は舗装された整然とした道、もう片方は雑草が生い茂り、どこへ続くのか分からない道だ。
選択を迫られたような気がして、一歩踏み出した。
その瞬間、霧が晴れ、眩しい光が差し込む。
そこには、忘れかけていた小さな夢の欠片が広がっていた。 🌟
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