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ひと言小説「消えた足跡」

「雪の先の記憶」

雪が降りしきる朝、駅前の道を歩いていると、不意に奇妙な足跡を見つけた。👣

他の人々の足跡が消される中、その足跡だけが鮮明に残っている。
まるで「ここへ来い」と言わんばかりだった。

足跡を追っていくと、人通りの少ない裏道へ導かれる。
冷たい風が頬を打ち、周囲の音は雪に吸い込まれるように静かだ。

その足跡は曲がりくねった道を進み、ついには森の中へと続いていた。
子どもの頃、よく遊んだ森だと気づく。
懐かしさが胸を満たし、不思議と恐怖は感じなかった。

木々を抜けた先、足跡が消えた場所に一軒の古びた家があった。
雪の重みで軒が傾きかけているが、見覚えがある。
そう、幼い頃に亡くなった友達、アキラの家だ。

ドアを開けると、埃っぽい空気の中に微かに懐かしい香りが漂う。
誰もいないはずなのに、部屋の奥から声がした。

「待ってたよ。」

振り向くと、そこには変わらないアキラの笑顔があった。
信じられない思いで近づくと、彼は消えるように雪の結晶となり、床に落ちた。

その後、家は吹雪の中で跡形もなく消えた。

足跡も、友達も、ただの幻だったのだろうか。

だが、胸の中に温かな何かが残っている。
それだけが確かだった。❄️✨

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