
ボロボロのスニーカー
クローゼットの隅に、古びたスニーカーが置かれていた👟
母がいつも履いていた靴だった
「お母さん、新しいの買おうよ」
そう言っても、母は決まって笑って首を振った
「まだ履けるから、大丈夫よ」
なのに、僕の靴はすぐに買い替えてくれた
運動会の前には真新しいスニーカーを用意してくれていたし、通学用の靴も定期的に新しくなった
「お母さんの靴も買おうよ」
何度そう言っても、「まだ大丈夫」と優しく笑うだけだった
母が亡くなったあと、遺品整理をしていたときのことだった
クローゼットの奥から、小さな箱が出てきた
中には、タグのついたままの真新しいスニーカーと、一冊の通帳
そして、折りたたまれたメモが添えられていた
『拓也の入学祝いに、新しい靴を買ってあげる』
涙があふれた
通帳には、少しずつ貯められたお金が記されていた💰
少額ずつ、何年もかけて積み立てられたものだった
母は、自分の靴を新しくするよりも、僕の未来のために貯金をしていた
「まだ履けるから」と言いながら、どれほどの思いでその靴を履き続けていたのだろう
僕のために、母は自分を後回しにしていた
その愛の深さに、涙が止まらなかった
新品のスニーカーをそっと手に取る
母は、これを履いて歩くことはなかった
けれど、僕は知っている
母の心は、ずっと僕と一緒に歩いていたことを
靴を抱きしめた
母の温もりが、まだそこに残っているような気がした
——ありがとう、お母さん👟✨
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