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ひと言小説「見えない花」

「種の秘密」

小さな村に伝わる不思議な種があった。
それは目には見えない花を咲かせるという。

「この種を植えた者の心が、花の姿を決めるのです。」

村の長老がそう語るたび、子どもたちは夢中で耳を傾けた。
その種は、手のひらに乗せても感じられないほど軽く、風にさらわれそうなものだった。

ある日、一人の若者が長老からその種を譲り受けた。
「僕の庭に、この村一番の美しい花を咲かせたい。」
そう言って彼は、村のはずれにある自分の庭に種を植えた。

次の日、彼は期待に胸を膨らませながら庭を見に行った。
しかし、庭には何の変化も見られない。

「おかしいな。もう花が咲いてもいい頃なのに。」
彼はそう呟き、首をかしげた。

村人たちも彼の庭を訪れたが、誰もそこに花を見つけることはできなかった。
失望した彼は長老に問いただした。

「どうして花が咲かないのですか?僕の心が問題なのでしょうか?」

長老は静かに微笑み、答えた。
「いいえ、花は確かに咲いています。ただ、それを見るには特別な目が必要なのです。」

彼は再び庭に戻り、じっと目を凝らして見た。
やがて、彼は気づいた。

自分の心の中にだけ、その花が鮮やかに咲いていることに。
花は村中のどの花よりも美しく、眩しいほどの輝きを放っていた。

その瞬間、彼は理解した。
この種は、自分自身の内面を映し出す鏡だったのだ。

心の中に咲いたその花は、彼にとって何よりも大切な宝物になった。
彼は微笑みながら、そっと目を閉じた。🌸✨

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