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ひと言小説「月夜の願い」🌕✨

「満月の約束」

真夜中の静けさの中、満月が空高く輝いていた。

彼女は窓辺に座り、小さな声で願いをつぶやく。「もう一度だけ、あの人に会えますように。」

その言葉は夜風に乗り、月光に吸い込まれるようだった。

次の日、彼女は何気なく駅前を歩いていた。
ふと立ち止まると、目の前には彼が立っていた。
数年前、突然音信を絶った恋人。

彼の表情は少し驚いていたが、すぐに柔らかな笑みに変わる。

「久しぶりだね。」

彼の声に胸が高鳴る。
だが、次の瞬間、彼の腕には幼い少女が抱かれていることに気づいた。

「紹介するよ、娘のさくら。」

彼女の中で時間が止まる。

満月の夜に秘めた願いが、思いも寄らない形で現実になったのだ。

だが、その現実は彼女が望んでいたものとは違っていた。

「あの日、突然消えた理由を話したいと思ってたんだ。」

彼の言葉が静かに耳に届く。
彼女は少し微笑み、首を振る。
「話さなくていいよ。今のあなたが幸せなら、それでいい。」

満月の夜がもたらしたのは、再会と同時に過去との決別だった。

窓から見上げる月が、どこか優しく彼女の背中を押しているように感じた。

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