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最後の宅配ネコが届けた小さな希望の物語

未来都市に残る温かな配達者

未来都市ミナトシティでは、配達のほとんどが自動化されていた。
空を行き交う小型ドローンが荷物を運び、人々は画面越しに「配達完了」の通知を見るのが当たり前になっていた。

そんな街で、ただ一匹だけ“人間の配達員”として働くネコがいた。
名前はタマ。
首元の青いリボンが目印で、小さなカバンを背負って街を駆け回る姿は、子どもから大人まで多くの人に愛されていた。

タマの仕事は、ドローンが届けられない「人の気持ち」がこもった品を運ぶことだった。
たとえば、シールで飾られた手作りカード。
手渡しで伝えたい贈りもの。
そして「直接受け取ってほしい」想い。

通りには、ペット型ロボットと暮らす生活を描いた広告「未来ペットコンパニオンと歩く日常」のホログラムが流れていたが、生身のネコであるタマはそんな視線には慣れっこだった。
機械にはない、温度のある配達をすることで、タマはミナトシティの象徴のような存在になっていた。

ある日の朝、タマは配達センターのスタッフに声をかけられた。

「タマ、今日は特別な依頼があるんだ」

スタッフが差し出した小さな包みには、淡い花柄の包装紙が丁寧に巻かれていた。
送り主は、郊外に住む老人のミキさん。
宛て先には、一人暮らしを始めた孫娘のユナの名前が書かれていた。

「ドローンではなく、タマに届けてほしいって」

タマはしっぽをふわりと揺らし、軽い足どりで街へ飛び出した。

ミナトシティは朝の光に染まり、ガラス張りの建物がきらきらと反射している。
タマは人の流れをすり抜け、信号のタイミングを見計らいながら駆けていく。
荷物の重さはほとんど感じない。
ただ、その中に込められた想いの温度だけが、背中でやさしく揺れていた。

配達先は、ユナが暮らすワンルームマンションの五階。
オートロックの前でタマが首の鈴を鳴らすと、部屋からユナの声が聞こえた。

「タマ? 今日も来てくれたの?」

扉が開き、ユナが笑顔でしゃがみ込む。
彼女の目元には、少し疲れた影が落ちていた。

「ミキさんからの荷物だよ。タマが届けに来てくれたんだ」

センターのスタッフがスマートフォン越しに伝えると、ユナは驚いたように息をのんだ。

「最近、学校のことで少し落ち込んでて……。だから、おばあちゃん、気にしてくれたのかな」

タマがそっと包みを差し出すと、ユナは胸の前で大切そうに受け取った。
その手は、ほんの少し震えていた。

部屋の中で包みを開けると、そこには小さな刺繍入りの布ケースが入っていた。
中には手紙と、おそろいのしおりが一枚。

「ユナへ。どんな日でも、君を大切に思っているよ。このしおりは、あなたと同じ色。無理せず、自分のペースでね。  おばあちゃんより」

ユナは手紙を読み終えると、目頭を押さえながらタマを抱きしめた。

「タマ……ありがとう。これ、本当にうれしい」

タマは静かにゴロゴロと喉を鳴らし、ユナの涙をそっと受け止めるように寄り添った。

すると突然、スマートフォンから着信音が鳴り響いた。
画面には「ミキ」の名前が表示されている。

「おばあちゃん! 届いたよ!」

ユナが電話に出ると、ミキさんの声が少し弾んで聞こえてきた。

「タマが届けてくれたのね。あの子に頼めば安心だからねぇ」

ユナは声を震わせながら笑った。

「うん。タマが来てくれると、なんだか元気になるんだ」

タマは電話の向こうから聞こえる優しい声に、尻尾をゆらりと動かした。
ミナトシティに住む人たちは、タマの存在が持つ力に気づいていた。
荷物を届けるという役目以上に、人の心に触れ、そっと灯りをともす力があることを。

その帰り道、タマはしばらく街を歩きながら、今日の配達を反芻していた。
夕方の風は涼しく、街はオレンジ色に染まっていく。
ビルの隙間を抜ける風にのって、あちこちの家から夕ご飯の匂いが流れてきた。

タマの首元の鈴が小さく鳴った。
それは、「今日も良い仕事をしたよ」という合図のようだった。

配達センターに戻ると、スタッフたちが笑顔で迎えてくれた。

「タマ、おつかれさま。今日の依頼、きっとユナちゃんに届いたよ」

スタッフの一人は、モニターに映る街の地図を見ながら冗談めかして言った。

「この街には、本当にネコの探偵がいるらしいよ。まるで物語の『未来都市の猫探偵』みたいだって、子どもたちが噂してる」

タマは静かに目を細め、しっぽをふわりと揺らした。
それは、喜びと誇りを伝える仕草だった。

未来はどれだけ技術が進んでも、人が誰かを想う気持ちは変わらない。
そして、その気持ちをつなぐ存在として、タマは明日もまた走り続ける。

最後の宅配ネコは、今日も誰かの心に小さな希望を届けるのだ。

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