
記憶をつなぐ“エンドロール”は、あなたの声だった🎞️💌
久しぶりに実家の自室を片付けていたときのこと。
ホコリをかぶった古い棚の奥から、一本のVHSテープが転がり出てきた。📼
タイトルもラベルもない、ただの黒いカセット。
でも、なぜか胸騒ぎがして、私は古びたデッキに差し込んだ。
画面にはノイズ混じりの風景。
そして、懐かしい声が流れた。
「今、君のことを想ってる。もし、これを見てるなら──」
その声は、10年前に亡くなった元恋人・湊のものだった。🎬
私たちは、映画を撮るのが好きだった。
大学の映像研究会で出会い、8mmカメラを片手に、季節の移ろいを追いかけた。
あの夏、蝉の声が騒がしくて、レンズ越しの彼の笑顔はやけに眩しかった。
けれど卒業を目前にして、湊は事故で急逝した。
私は、彼と撮ったテープも、彼との記憶も、痛みと一緒に封印したつもりだった。
それなのに、今になって彼の声が届くなんて。📽
テープには続きがあった。
カメラの前で、湊が少し照れくさそうに笑っている。
「これ、卒業制作じゃなくて──君に贈るラブレター。
10年後、君が今も映画を好きでいてくれたら、見つけてくれるかなって」
まるで時を超えた告白だった。🌸
私はふと、自分が今、映像編集の仕事を続けている理由を思い出した。
あの頃と変わらず、誰かの人生を映像に残す仕事を選んだのは、
きっと彼との約束を、どこかで守っていたかったから。🎞️
ラストシーン、彼の声が優しく響いた。
「君が誰かを好きになったら、このテープは捨ててくれていいよ。
でも、もし誰とも付き合わなかったなら──
そのときはもう一度、僕に会いにきてくれないかな」⏳
涙で曇った画面に、彼が微笑む。
私は画面に向かって、小さく頷いた。
──その時、電話が鳴った。📱
ディスプレイには見覚えのない番号。
ためらいながら出ると、穏やかな男性の声がした。
「あの、あなたって……湊の“映画の人”ですか?」
「え?」
「僕、彼の弟なんです。
兄の遺品の中に、あなたの名前と電話番号が書かれたノートがあって……
どうしても、このフィルムを届けたくて」🕊
記憶の扉が、また一つ開く気がした。
私は深呼吸して答えた。 「ありがとう。会って、お話がしたいです」🎥
物語は、終わっていなかった。
私の“エンドロール”には、まだ新しい始まりが待っていた。
コメント