
見つけたのは“手紙”、それとも“プロット”?📖💔
「これ、誰?」📍
彼の部屋の引き出しの奥。
一枚の便箋が、くしゃくしゃになって眠っていた。
淡い桜色の紙に、手書きで綴られた文字。
文末には「大阪の女より」とだけ書かれていた。
私は動揺を隠せなかった。
付き合って半年。
私たちの関係は順調だと思っていたのに。
「浮気……?」
小さく呟いた声が、部屋に沈んだ。🖋
彼が帰ってきたのは、それから30分後。
「この手紙、何?」
私は机の上にそれを置いた。
彼は一瞬だけ、表情を凍らせた。
「……ああ、それ」
「ああ、って何よ」
「これは、“小説の一部”やねん」
彼はそう言った。📘
彼は大学時代、文芸サークルに所属していた。
今もたまに趣味で短編を書くという。
「これは、“大阪の女性”って架空のキャラクターが、
遠距離恋愛の彼に送った手紙っていう設定やねん」
私は信じられなかった。
でも、彼の言葉はやけに整っていて、
まるで“あらすじ”を語るようだった。
「ほんまやで。ほら、このUSBにも草稿が入ってる」📂
彼のパソコンに差し込まれたUSB。
開かれたフォルダの中には、“大阪の女性.docx”というファイルが確かにあった。
その中には、手紙と同じ文章。
でも――
そのあとに続くページには、こう記されていた。
「そして彼女は、この手紙を見つけてしまう」
「男はそれを“フィクション”だとごまかす」
「だが実際は――」
その先は、まだ書かれていなかった。🧩
私の心臓が、じわりと冷たくなる。
これは“創作”か?
それとも、“現実”をごまかすための“創作”という仮面か?
私は彼を見た。
彼は、私の目をまっすぐに見返していた。
「信じてくれる?」
「それ、物語のセリフじゃなくて?」
一瞬、彼の目が揺れた気がした。🗝
その夜、私は彼の机にもう一度戻った。
引き出しの底。
「大阪の女性」の手紙の下に、もう一通の手紙があった。
内容は短かった。
「来月、また大阪に戻ります。今度は……彼女に気づかれないように」
「“あなたの創作”は、ほどほどにしておいてね」
差出人の署名は、たしかに――
**“大阪の女”**だった。
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