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ひと言小説「白い花」

「真夜中の花束」

深夜、部屋のインターホンが鳴った。
時計を見ると午前0時を少し回ったところ。
誰だろうと思いながら、恐る恐るドアを開けると、そこには白い花束が置かれていた。

🌙 淡い月明かりに照らされた純白のバラたちは、まるで夜空の星々を集めたように美しかった。
花束には一枚のカードが添えられていたが、そこには何も書かれていなかった。

誰が送ったのか、なぜ今なのか、何の手がかりもない。
ただ、その静かな美しさに目を奪われて、私はしばらく立ち尽くしてしまった。

🌹 花束を手に取り、部屋のテーブルにそっと置いた。
香りがふわりと広がり、心を落ち着かせてくれる。
しかし、不思議な胸騒ぎは収まらなかった。

翌朝、私は同僚にその話をした。
「もしかして、誰かのいたずらじゃない?」と笑いながら言われたが、どうにも腑に落ちなかった。
誰が深夜にこんなものを届けるだろう?

その日の夜も、花束は変わらず美しく咲いていた。
だが、その美しさを見るたびに、何かが胸の奥に引っかかる。

数日後、花束のバラは少しずつ枯れ始めた。
私はそれを手入れしようと花瓶から取り出した。
すると、最後のバラの茎に、小さな文字が刻まれているのを見つけた。

“また会いに行くよ”

🌟 一瞬、息が止まる。
何が起こっているのか理解できない。
刻まれた文字は確かにそこにあった。

それからというもの、インターホンが鳴るたびに心臓が跳ねるようになった。
花束が届いた日から、私の日常は少しずつ狂い始めていた。
そして、真夜中に鳴るドアベルの音だけが、今も耳元に残っている…。

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