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ひと言小説「影法師」

「駅の影」

朝の通勤ラッシュがひと段落した駅のホーム。

私は何気なく列車を待ちながら、ふと反対側のホームに目を向けた。

すると、そこに立つ一人の男性の姿が目に入った。

その背中は、幼い頃に亡くなった父にそっくりだった。✨

一瞬、心臓が止まるような感覚に襲われた。

「お父さん…?」

思わず声に出しそうになるのを飲み込みながら、目を凝らしてその人影を見つめた。

しかし、次の瞬間、その人は振り返りもせず、スッと人混みの中に溶け込んでいった。

私が走り出してホームを駆け抜ける頃には、彼の姿はすでに消えていた。

すれ違う人々の中で、私は立ち尽くす。

駅のアナウンスが響き、近くの電車が到着する音がした。

けれど、私の耳には何も入ってこない。

その日、家族写真を見返して確信した。

彼は間違いなく、父だった。🍃

亡くなった人が現れるなんてあり得ない。

でも、あの影は確かに私を見守ってくれていたのだと信じたい。

——駅の影には、そんな記憶の温かさが宿っていた。

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