
カード一枚で世界が変わる朝☀️💌
🌳日曜の朝。
駅前の小さな公園で、沙羅(さら)はベンチに座りながら、待ち人の姿を探していた。
5分遅れで現れた隼人(はやと)は、息を弾ませつつも、何やら満足げな表情だった。
「おはよう、沙羅。今日はちょっと特別な場所に行きたいんだ。電車、乗るよ」
「電車って…どこ行くの?」
「それは乗ってからのお楽しみ。
あ、その前にこれを受け取って」
そう言って隼人が差し出したのは、名刺サイズの白いカード。
そこにはただ一行――
やぶさかではございません
だけ。
沙羅は思わず笑った。
「古語? どういう意味?」
「“喜んで引き受けます”って意味だよ。
……今日の俺の気持ちを先に伝えておこうと思って」
沙羅は意味をはかりかねながらも、胸ポケットにカードをしまった。
🚉駅に着き、構内に入ると、構内アナウンスが響く。
「回送列車が13番ホームにまいります。」
ふだん使われない臨時ホーム。
隼人は迷わずそちらへ歩き出す。
「まさかこの電車…貸し切り?」
「乗って確かめて」
💨沙羅は驚きながらも後を追った。
13番ホームには銀色の回送列車が静かに停まっていた。
二人が乗り込むと、ドアが閉まり、車内灯が落ちる。
代わりに天井のスクリーンが点灯し、スーツ姿の隼人が映し出された。
📽️映像の中の隼人は深々と一礼した。
「これより、内定辞退発表会を行います」
沙羅「……なにそれ?」😨
映像の隼人「僕は大企業の内定を辞退しました。
将来、海外で働く話も出ていたけど、それよりも――君のそばにいたいと思ったんだ。
その決断に――やぶさかではございません」
列車が静かに動き出す。
スクリーンの中の隼人が言葉を続ける。
「リアルの僕は最後尾で待っています。
答えを、君の声で聞かせて」
沙羅は胸ポケットのカードを握りしめながら車両を駆け抜ける。💦
最後尾のドアを開けると、そこには花束と小さな箱を持った隼人がいた。
「……本当に辞退したの? 将来、変えちゃっていいの?」
「うん。君と一緒にいる未来が一番ほしかった。
だから、迷いなんてなかった」💍
沙羅は深呼吸を一つし、白いカードをそっと隼人に返した。
「じゃあ私も、あなたの選んだ未来を受け取ることに――やぶさかではございません」
🌟その瞬間、列車は次の駅に到着した。
ドアが開くと、休日の朝日が差し込む静かなホーム。
けれど、二人にとっては、すっかり新しい世界の入口だった。
隼人が差し出した指輪を受け取る沙羅。
そのときだけ、時間が映画のラストシーンのように静まり返った。
「ねえ、今日どこに行くの?」と沙羅が笑うと、隼人はカードを掲げた。
「“やぶさかではございません”って言っただろ?
君となら、どこへでも」
二人は朝陽の中を並んで歩き出す。☀️❤️
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