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ひとこと小説「パラレル夫婦」

もう一つの明日で待ち合わせ💫❤️

🏙️春霞の朝、目覚めた弥生は、隣で眠る夫・航平を見て首をかしげた。

彼の利き手が右から左に変わっていた。

「また世界がズレたの?」😳

そう、弥生と航平は“毎晩、違うパラレルワールドの自分たちに入れ替わる”不思議な体質を抱えた夫婦だった。

結婚式の夜に最初のズレが起き、以来二人は毎朝、微妙に違う相手と暮らしてきた。

笑い皺の深さ、好物の味付け、部屋の配置—どれも少しずつ違う。

けれど愛情だけは恒星みたいに揺らがない☀️。

🌙その夜、弥生は眠りに落ちる直前、航平に耳打ちした。

「どの世界でも、明日の午後3時、河川敷の桜の下で会おうって約束しよう」🌸

航平は微笑み、小指を絡める。

「パラレル夫婦のリマインダーだね」

翌日3時。

桜並木には、右利きの航平も、左利きの航平もいなかった。

代わりにベンチに置かれていたのは、一通の封筒と古びた腕時計⌚️。

【僕は “軸点” の世界へ行く。

君が本当の僕を見つけたら、針が動き出す】

弥生は時計を握りしめた瞬間、視界が反転する。

次の瞬間、無数の桜が時雨のように舞う薄闇のトンネルに立っていた。

そこには何百もの航平が、異なるスーツや学ランや作業着で歩き交う。

目が合うたびに彼らは“ごめん、僕じゃない”と首を振る。

時計の針は止まったまま。

🌠めげずに進んだ先で、弥生は唯一こちらに背を向け、静かに桜の花びらを受け止める男を見つけた。

時計の秒針が微かに震えた。

弥生が声をかけようとした瞬間、男は振り向かずに言った。

「君がどの弥生でも、僕は君が好きだよ」

その声は間違いなく、結婚式で誓いの言葉を交わした“あの日の航平”だった。

弥生の頬に涙が浮かぶ。

「ねえ、帰ろう。

世界が何度ズレても、一緒に朝日を見たい」🌅

航平は振り向き、ポケットから桜色の指輪を取り出す。

右でも左でもない、両手で包むように弥生の指へ。

途端にトンネルが崩れ、二人は元の河川敷に立っていた。

時計の針は3時を指し、静かに動き出している。

弥生が見上げると、桜の花びらの間に一瞬、無数の世界がプリズムのように輝いた。

でも手の中の温もりは一つだけ。

「私たち、明日もズレるかな?」

航平は笑った。

「ズレても並行、決して離れない。

それが—パラレル夫婦」❤️

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