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ひとこと小説「プリントの裏」

「最後のメッセージは、君の文字で」

「机の上、片付けてくれる?」

先生にそう頼まれて、僕は帰り支度をしながらプリントを回収していた📄
教室にはもう誰もいなくて、夕焼けが窓から差し込んでいた。

ふと、一枚だけ裏返しになったプリントが目にとまった。
いつもの授業プリント——と思ったけど、裏面に文字が書かれていた🖋️

見覚えのある丸い字だった。

「ごめんね。ほんとはずっと好きでした」
「でも、ちゃんと伝えられなかった」
「卒業したら、もう会わない気がして、今、書いてます」
「これ、誰にも見つからないかもだけど……」
「もし見つけたのが、あなたなら、それでいいです」

その名前は書かれていなかったけど、僕にはすぐにわかった。

最後の行に、小さなハートが添えられていた❤️
あの子しか、こんなことしない。

隣の席だった彼女。
いつも明るくて、でもどこか一歩引いていた。
僕は、彼女が卒業式の翌日から来なくなった理由も、知らずにいた。

プリントを胸にしまって、僕は窓の外を見た。
夕陽が落ちかけていて、教室が少しだけオレンジに染まっていた🌇

それから数年。
大学生になった僕は、アルバイト先の文房具店で偶然彼女と再会した。
「えっ……」
彼女も驚いた顔で立ち止まり、そして、はにかんだ。

「ねえ、あの時のプリント、見た?」

僕は頷いた。
そして、財布から折りたたんだ紙を取り出した。

「捨てられなかったんだ」

その日、僕たちはカフェで何時間も話した。
話題は、高校の頃のこと、共通の友人、そして——あのプリントの裏。

「ほんとに……見つけてくれて、ありがとう」
彼女の目には、少し涙が浮かんでいた😊

言葉じゃなくても、伝わる想いがある。
そして、想いは時を越えて、ちゃんと誰かに届くことがある。

帰り道、僕の胸ポケットには、あのプリントのコピーがしまわれていた。
彼女が「まだ持ってていいよ」って笑ってくれたから。
そして、今度こそちゃんと伝えようと思った。

——ありがとう、そして、僕も好きだよって。

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