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ひとこと小説「メトロノームのリズム」

時間を越えて、恋が再起動する瞬間⏳💓

地下鉄の最終便。
ホームの端で、僕はひとり、電車を待っていた。

そのときだった。
「時報みたいに、またここで会えるなんて」
振り向くと、そこにはアイリがいた。
五年前、僕がタイムジャンプ実験に巻き込まれて行方不明になった日、彼女は僕に手を振った。

──あの別れが、最後だと思っていた。

でも今、アイリは僕の前に立っている。
しかも、まるで何もなかったかのように。

「君は……あのときの時間から来たのか?」
問いかけると、アイリは微笑んだ。

「違うよ。私は“今”の世界線でずっと待ってたの」

彼女の右手首には、僕が昔作ったメトロノーム型のAIリストバンドが光っていた。
それは“感情の揺らぎ”を読み取って、最適な再会のタイミングを計る装置だった。

僕は未来に跳んだ。
彼女は過去に残った。

でも、メトロノームのリズムがふたりの時間を揃えた。🌌

地下鉄がゆっくりと滑り込む。
ドアが開き、彼女が先に乗り込む。
「行こう。未来の続きを、今から始めよう」

僕はうなずいて彼女の隣に座る。
車内には他にも数人の乗客がいて、それぞれの時間に浸っているようだった。

アイリは僕の肩に視線を落とし、静かに口を開いた。
「……本当は諦めようと思ったこともあった。
でもこのリズムが、あなたの気配を感じさせてくれてた」

メトロノームは静かに時を刻んでいた。
まるで、ふたりの鼓動にぴたりと重なるように。

ふと、彼女が笑った。
「ねえ、覚えてる? あなた、最初はこのメトロノームを“恋愛の無駄遣い”って言ってたんだよ」

「そんなこと言ったっけ?」
「言った。なのに、最後にあなた自身が作り直して、私の腕に巻いてくれた」

僕はその記憶をたどりながら、彼女の手にそっと触れた。
「じゃあ今度は、無駄にしないよ」

彼女は目を細め、ゆっくりとうなずいた。
その仕草は、どこか懐かしくて、時間を超えて届いた宝物のようだった。💫

交差した時間軸の果て、ようやく訪れた恋のタイミング。
「今なら、ちゃんと手を繋げる」
そう言って、彼女は僕の手を握り返した。

もう、取り残される未来はない。
このリズムが続く限り、僕たちは一緒だ。

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