
「十年越しの春」
駅から続く並木道🌸
風に舞う桜の花びらが、視界をふわりと染める。
待ち合わせの場所に着くと、そこには彼女がいた。
10年前と変わらない笑顔で。
「久しぶり」
懐かしい声に、胸が軽く震える。
高校の卒業式の日、彼女は突然遠くへ引っ越してしまった。
「またね」と言ったまま、連絡も取れなくなった彼女。
目の前の彼女は、あの頃と何ひとつ変わっていない。
それどころか、制服の時のままだった。
「ずっと待ってたんだよ」
ふと、背中に冷たい風が通り抜けた。
足元に散った花びらが、彼女の影を通り抜けていく。
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