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ひと言小説「記憶の声」

「囁きの図書館」

📚 静かな図書館の一角。
古びた木製の机に向かい、小説のページをめくっていた。

その時、背後から小さな囁き声が聞こえた。

「諦めるな」。

🍂 一瞬、背筋が凍る。
振り返ったが、そこには誰もいない。
ただ、静寂だけが広がっていた。

「気のせいだろう」。
そう自分に言い聞かせて再びページに目を落とす。

しかし、その言葉がどうしても頭から離れなかった。
「諦めるな」。
まるで、自分だけに向けられたメッセージのように感じた。

🌤️ しばらくして、ふと気づいた。
その言葉は、幼い頃に亡くした祖父の口癖だった。

幼少期、祖父はよく言っていた。
「何があっても諦めるな。 必ず道は開ける」と。

🌱 まさか、こんな場所で耳にするとは思わなかった。
胸の中にぽっかりと空いた穴が、ふと温かさで埋まるような気がした。

帰り際、本棚の隙間から微かな風が吹き抜ける。
その風がまるで、祖父の優しい手がそっと背中を押してくれるように感じた。

🌟 図書館を出ると、空は澄み渡り、柔らかな陽射しが街を照らしていた。
祖父の声はもう聞こえない。
けれど、その言葉は確かに私の中に残っている。

「諦めるな」。
その声に背中を押され、私は一歩踏み出した。

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