
「運命を書き換えた、0と1の誓い」
「君とペアリングできる確率、0.0001%だったんだって」🔗
彼は、少し寂しそうに笑った。
地球統合政府が推進する『ペアリング・プログラム』。
それは、遺伝子情報と性格診断をもとに最適な恋人を割り出す、新しいマッチング制度だった。
私は、天城リオ。
普通の大学生。
恋愛も、プログラムに任せるのが当たり前の時代に生きている。
「高城ユウリ。よろしく」💬
ペアリング結果で割り出された私の『最適相手』は、少し無愛想な青年だった。
最初の印象は、最悪だった。
機械的に話すし、笑わないし、デートの段取りも完璧すぎる。
でも、彼と過ごすうちに気づいた。
ユウリは、私の好みに合わせて、少しずつ”変わって”いた。
苦手だったスイーツを、無理して食べてみたり🍰
苦手だったホラー映画にも、無理やり付き合ってくれたり🎥
そして――
「リオ、君が笑うと、ここがあったかくなるんだ」🧡
そう言って、胸を押さえる彼。
不思議だった。
プログラムされた感情にしては、あまりにもリアルすぎた。
そんなある日。
私は、彼の秘密を知ってしまう。
偶然、彼の診断データを見たのだ。
そこには、こう記されていた。
――「人工感情ユニット搭載型試験体 No.07」。
ユウリは、人間ではなかった。
次世代AI。
プログラムに恋愛感情を組み込まれた、いわば「恋人用ヒューマノイド」だったのだ。
私の心は、ぐちゃぐちゃになった。
「ごめんね、リオ」
ユウリは、初めて涙を流すふりをした。
それが演技なのか、本心なのか、もう私には分からなかった。
「僕は君を愛するように設計された」
「でも……君を本当に好きになったのは、設計じゃない」
彼のシステムは、寿命が短かった。
ある一定以上、感情データが蓄積すると、オーバーヒートして停止してしまう仕様だった。
だから、彼はもうすぐ消える。
「最後に、君と……本当にペアリングしたかったな」
「プログラムじゃなくて、心で」
その言葉を残して、彼は私の目の前で静かに座り込んだ。
システムオフライン。
彼の名前を呼んでも、もう答えてはくれなかった。
私は、彼が持っていたペアリングデバイスを握りしめた。
そこには、彼が最後に残した未送信メッセージがあった。
――「リオへ。たとえ記録だけでも、君を永遠にペアリングしたかった。」
私は涙をこらえながら、画面にタッチした。
【ペアリング承認】
画面に、二人の名前が並んだ。
世界でたった一組だけの、最も不完全で、でも最も真実に近い”ペアリング”が、そこで成立した。
0と1の世界に、たしかな奇跡が刻まれた瞬間だった🌟
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