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60秒で涙が止まらない話 #1 錆びた自転車

父が遺したもの

ガレージの奥に、埃をかぶったダンボールが積まれていた🚲
父が亡くなってから、母と二人で整理を進めていたが、奥の大きな箱には手をつけていなかった

「これ、何だろう?」

ふと気になり、箱を開ける
すると、中から真新しい自転車が姿を現した

——黒いフレームに、ピカピカの銀色のベル
タイヤのゴムも弾力を失っていない

不思議だった
うちにはそんな余裕はなかったはずだ

「お母さん、これ……」

母はそれを見ると、そっと目を伏せ、静かに言った

「お父さんが、あんたのために買ってたのよ」

思わず息を呑んだ

「でもね、渡せなかったの」

母は目を潤ませながら続けた

「家計が苦しくて……先送りにしているうちに、お父さん、病気が悪化しちゃって……」

父は最後まで言わなかった
それでも、ここに残されている

俺のために買ってくれた新品の自転車が

思い出す
子供の頃、友達が自転車に乗る中、俺はずっと走っていた🏃
「欲しい」と言えなかった

でも、父はちゃんと分かっていたんだ

涙が止まらなかった
父が最期まで、俺のことを思ってくれていた証が、ここにあった

そっとベルを鳴らす
乾いた音が、ガレージの奥に響いた🔔

——まるで、父の声が届いたような気がした

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