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恋愛小説

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ひとこと小説「名札の裏」

名前じゃなく、気持ちを残したかった💧入社式の日、僕の隣に座ったのは、どこか見覚えのある女性だった。薄茶のセミロング、静かな笑顔──それは高校のとき、たった一度だけ僕が想いを伝えた、あの夏希だった。返事はなかったけれど、その沈黙がすべての答え...
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ひとこと小説「名前のない招待状」

あの日の春を、もう一度咲かせたくて🌸春の午後、ポストの中に一通の封筒が差し込まれていた。差出人の名前も、宛名もない。けれど、見覚えのある薄いクリーム色の紙に、僕は心臓が跳ねる音を感じた。──それは、遥の使っていた便箋だった。高校時代、僕と遥...
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ひとこと小説「転校生の席」

あのぬくもりに、もう一度ふれる朝🌸冬休みが明けた朝、教室の窓にはうっすらと結露が残っていた。まだ少し眠たげな空気の中、僕はストーブの前で手をあたためながら、いつもの席へと向かう。──隣の机が、きれいに片付けられていた。そこにはずっと、七海が...
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ひとこと小説「君の忘れ物」

届いたのは、あの日の後悔と赦し🌸彼女が引っ越したのは、春の終わりだった。大学の合格が決まったその日、僕らは初めて手を繋いだ。「忘れ物、しないでね」そう言って笑った彼女に、何か返したかったけど、言葉が出てこなかった。でも僕は、その頃、自分の気...
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ひとこと小説「落書きの文字」

拾い直した、あの日の気持ち🌸中学の卒業式の日、ぼくの机に鉛筆でこう書かれていた。「好きだったよ」名前も書かれていない、たったひとこと。でも、その筆跡は丁寧で、どこか迷いが見えた。誰が書いたのか、なぜ自分の机だったのか。何度も考えたけれど、答...
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ひとこと小説「紙飛行機の行方」

ふたりの未来を乗せて、風の彼方へ🌤公園のベンチの下に、小さな紙飛行機が落ちていた。丁寧に折られていて、誰かが大事に飛ばしたもののように見えた。ぼくはそれを手に取り、空に向かって軽く放ってみた。風に乗って、思いのほか遠くまで飛んでいく。その先...
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ひとこと小説「充電器の貸し借り」

それは、未来を繋ぐコード🔌「すみません、充電器……貸してもらえませんか?」その声に振り向いた瞬間、時間が歪んだ気がした。彼女は不思議な雰囲気をまとっていた。地味な服装に、どこか古びたスマホ。けれど目だけは、未来を見ているような光を放っていた...
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ひとこと小説「咲かない花」

「待っていてね」と彼女は言った🌟「この花が咲いたら、帰ってくるから」そう言って彼女が残したのは、一輪の白い蕾だった。それは決して咲かない花──、人工的に遺伝子操作された“時間の花”と呼ばれる宇宙植物だった。彼女は“時間航行士”だった。光速に...
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ひとこと小説「同じ靴」

「あの人の面影は、歩き方に宿っていた」👟通勤ラッシュを避けて、少し遅めの電車に乗った朝。ホームでふと目にとまったのは、一組の男女だった。並んで歩く二人。特別な会話をしているわけでも、見つめ合っているわけでもない。ただ、歩調だけがぴたりと揃っ...
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ひとこと小説「満月とポラロイド」

「あの日の笑顔が、今も焼きついている」ポラロイドカメラを手に、久しぶりに海辺へ向かった。あの夏、彼女と最後に歩いた道を、一人でたどるように。満月が静かに浮かぶ夜だった🌕波の音も、風の匂いも、あの頃と何も変わっていないように思えた。カメラを構...