
あの日の嘘が、未来をつくった💍
純白のドレスに身を包んだ彼女に「結婚、おめでとう」と伝えた瞬間、胸の奥で何かが音を立てて崩れた。
高校時代、彼女はいつも隣にいた。
笑顔で、無邪気で、俺のことを「親友」と呼んでくれていた。
でも俺は、ずっとその言葉に甘えていた。
想いを伝えたら、今の関係が壊れるのが怖かったから。
卒業式の日、彼女は泣きながら言った。
「実は、東京の大学に行くことになったの」
驚いた俺に、彼女は小さく笑った。
「でも、まだ誰にも言ってないの。…あなただけに言った」
心が揺れた。
もしかしたら、自分だけに想いを託してくれたのかもしれない。
でも俺は臆病だった。
「がんばって」と言って、背中を押してしまった。
それから十年。
地元の友人の結婚式。
新婦の名前を聞いた瞬間、息が止まった。
彼女だった。
あの頃の笑顔のままで、でも、眩しすぎるほどの輝きをまとっていた。
彼女の隣に立つのは、俺の親友だった男。
高校の頃から仲が良くて、でも彼は、彼女のことを好きだなんて一度も言ってなかった。
ふと目が合った彼女が、小さく笑った。
そしてその夜、式が終わったあと、彼女が一人で会いに来た。
「本当はね、卒業式の日、あなたに言ってほしかったんだ」
「行かないでって、そばにいてって」
俺は黙っていた。
「でも…あなたが言ってくれなかったから、私、自分を奪ってくれた人の方を選んだの」
そう言って、彼女は涙を浮かべたまま笑った。
「今さらずるいよな」
俺も笑った。
「うん。
でも、あの日奪われたのは…たぶん私の心のほうだったのかも」
彼女が最後にそうつぶやいたとき、春の風がそっと吹いた。
桜がひとひら、俺たちの間に落ちた。
そして彼女はもう一度、あの笑顔で言った。
「でも、ありがとう。あなたがいたから、私、強くなれた」
俺は、何も言えなかった。
でも、ようやく心から彼女の幸せを願えた。
きっとこれは、遅すぎた「さよなら」。
でも同時に、彼女の未来を祝う「ありがとう」でもあった。🌸💔💍
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