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ひと言小説「消えた時間」

「止まった世界」

部屋の中で時計が突然壊れた。
秒針がカチッと音を立てて止まった瞬間、空気が変わった。

✨ いつもは聞こえていた外の車の音や、壁時計のリズムがピタリと消え、まるで世界全体が凍りついたようだった。
私は目をこすり、耳を澄ませたが、何の音も返ってこない。
何かがおかしい。

机の上のペンを手に取り、そっと床に落としてみた。
けれどペンは宙で止まり、そのまま動かなかった。

「夢…なのかな」😨そうつぶやいても、自分の声すら耳に届かない。
不安がじわじわと広がり、全身に鳥肌が立った。

部屋の窓を開けると、外の景色も動いていない。
通りの向こうでは、自転車をこぐ少年が空中で静止し、風に揺れるはずの木々も微動だにしない。

✨ 部屋に戻り、壊れた時計をじっと見つめた。
その文字盤には、見慣れない文字が浮かび上がっていた。

「時間の遠方で待っている」⏳

星のように薄い光を放ちながら書き込まれたその文言は、気味の悪いほど鮮明で、背筋を凍らせた。

突然、時計が「カチ」と音を立て、動き始めた。
途端に、周囲の音が一斉に戻ってきた。
外の車の音、風のざわめき、自分の心臓の鼓動までも。

✨ だが、私の手の中には、浮かび上がっていた文字が書かれた紙切れが握られていた。
その紙には「またこの時間に」とだけ記されていた。

それが何を意味するのか、私には分からない。
ただ、時計が壊れるたびに何かが起こるのだと、漠然とした予感が胸をよぎった。⏰✨

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