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ひと言小説「消えた風景」

「幻の少女」

小学生の頃、私は絵を描くのが大好きだった。
毎週の図工の時間には、スケッチブックに空想の風景を広げるのが楽しみだった✨。

ある日、描いた風景画に、見知らぬ少女が立っているのに気づいた。
緑の草原の真ん中、白いワンピースを着た少女が、こちらをじっと見ている。

その時は特に気にせず、「自分で描いたんだろう」と思い込んでいた。
だが、後から思い返すと、その少女を描いた覚えは一切ない。

中学、高校と進むにつれ、絵を描くことは次第に減り、そのスケッチブックも忘れ去られていった。

大学生になった頃、実家に帰省した際、偶然そのスケッチブックを見つけた。
懐かしい気持ちでページをめくり、例の風景画を目にした瞬間、全身に鳥肌が立った。

その少女が、少し成長した姿になっていたのだ。

髪は肩まで伸び、白いワンピースの裾が風に揺れている。
そして、その視線はどこか悲しげだった。

怖くなり、すぐにスケッチブックを閉じたが、記憶からその風景が消えることはなかった。

社会人になり、ふとした折にその絵のことを思い出す。
あれは一体誰だったのか。
なぜ、描いた覚えのない人物が絵の中で成長していくのか。

今でも、その理由はわからない。

ただ、時折、夢の中であの少女に会う。

夢の中の彼女は、大人びた表情で微笑み、静かにこう言う。

「また、会えるといいね…。」

目が覚めると、胸の奥にぽっかりと穴が開いたような感覚が残る。

誰だったのだろう。
そして、私はもう一度彼女に会えるのだろうか。

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