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ひと言小説「名前の残像」📖🌸

「忘れられない呼び名」

駅のホームで聞こえたその名前に、僕の足は止まった。

「ユウキ」――懐かしさとともに蘇るのは、幼い頃の思い出だ。

家の庭で遊んだあの日。
風が吹き抜け、花の香りが漂う中、あの声が僕を呼んでいた。

「ユウキ、こっちだよ!」

それは、引っ越しの直前にできた唯一の友達がつけてくれたあだ名だった。

学校では本名でしか呼ばれなかった僕にとって、そのあだ名は特別だった。

けれど、記憶の中のその子の顔や名前までは思い出せない。

ただ、その呼び名だけが僕の心に引っかかり続けている。

電車がホームに滑り込む音で、ふと我に返る。

周囲を見回しても、名前を呼んだ人の姿は見つからない。

けれど、その声が確かに聞こえた気がするのだ。

電車に乗り込んで座ると、窓の外の景色が流れていく。

その中に、小さな公園が見えた。

「あの場所だったかもしれない」

心の奥に沈んでいた記憶が、今にも目覚めそうな気がした。🌟

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