
「消える灯火の記憶」
打ち上げられた花火が夜空を彩るたび、幼い頃の記憶が胸をよぎる。
「あの花火が消える前に願いを言うと、未来で叶うんだって!」
そう言って彼女が笑いながら告げたのは、小学校の夏祭りだった。
真っ赤な浴衣の彼女が小さな手を差し出す。
「絶対、未来でまた一緒に見ようね!」
その言葉に、僕は無邪気にうなずいた。
子どもながらに、未来は約束通りに訪れると思っていた。
それから十数年。
祭りの会場は変わらずそこにあり、夜空には同じように花火が咲いている。
しかし、隣にいるのは彼女ではない。
「早く見つけてくれるといいね。」
隣の恋人が微笑みながら手を握る。
夜空に最後の大きな花火が開いた瞬間、記憶の中の彼女が小さくつぶやく声が蘇る。
「また未来で。」
だがその灯火も、次の瞬間には静かに夜に溶けていった。✨
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