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ひとこと小説「虹色の手紙」

「雨がやんだら、届いた未来」

朝の雨が嘘みたいに、午後には陽が射していた。
いつもの駅前に咲くアジサイが、光を浴びて虹色に輝いて見えた🌈

「ポストに手紙、届いてたよ」
帰宅すると、母が白い封筒を差し出した。
差出人は…見覚えのある名前。

高校時代の彼女、紗季。
卒業式の日に泣きながら別れたきり、もう五年になる。

突然の手紙に戸惑いながら、封を切った。
そこには丁寧な文字でこう書かれていた。

「今でも、あの日の君の笑顔を思い出す。
もう一度だけ、あの場所で会えませんか?
虹が見える坂道で、明日の午後三時に」

なぜ今さら?
もう忘れたはずだったのに。
けれど、心の奥が小さく疼いた。

次の日、空はまた朝から曇っていた。
午後三時、彼女との思い出の坂道に着いた時、小雨が降り出した。

やっぱり、来るべきじゃなかったか――

そう思った瞬間、雲間から光が差し込み、空に虹がかかった🌦
その虹の向こうに、傘を差した誰かが立っていた。

近づくと、見覚えのある横顔。
紗季だった。

「…手紙、届いたんだね」
彼女が微笑む。

「うん、虹が道しるべになってくれた」

その手には、もう一通の手紙。
僕宛てじゃない。

「これ…本当は、五年前に渡すつもりだったの」

差し出された封筒には、震える文字で“さようなら”と書かれていた。
でも、それは開けられることなく、今、ふたりの間に存在している。

「でもね、今日あらためて思ったの」
「さようならの代わりに、“はじめまして”でもいいかなって」

雨上がりの虹の下、未投函だった手紙が、ようやくその役目を終えた📩
僕らの未来が、静かに動き出した瞬間だった。

あのとき言えなかったこと、聞けなかった気持ち。
全部、時を越えて今ここにある。

彼女の手が、そっと僕の指先に触れた。
温もりは変わっていなかった。

空にかかる虹が、二人を包み込むように揺れていた🌈
もう一度出会えたこと、それだけで奇跡だった。

今度こそ、大切にしたいと思った。
“またね”じゃなく、“これからも”という約束を胸に――

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