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ひと言小説「渡せなかった指輪」

「ポケットの中の約束」

スーツのポケットの中で、小さな箱が沈黙している💍

数年前、彼女の誕生日に用意した婚約指輪だった

「この指輪、似合うと思うんだ」

そう言おうと決めていたのに、彼女は突然いなくなった

理由も告げず、何の前触れもなく

彼女を探し続けた日々も、やがて諦めに変わった

それから数年後

偶然、知人から届いた結婚式の招待状に、彼女の名前を見つけた

式場に足を運ぶと、純白のドレスに身を包んだ彼女が別の誰かと誓いを立てていた👰

微笑む彼女の指には、新郎が贈った指輪が輝いていた

ポケットの中で、小さな箱が冷たく重く感じる

あの日、彼女が残した最後の言葉が蘇る

「ごめんね、あなたとは一緒にいられないの」

その意味を、今になって理解した気がした

静かに式場を後にし、ポケットの中の指輪を握りしめる

「この指輪の行き場は、もうないんだな」

青空の下、そっと息を吐き、未練を風に溶かした🌿

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