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ひと言小説「波の記憶」

「瓶の行方」

砂浜を歩いていると、波打ち際に一本の瓶が転がっていた。🌊

濡れたガラス越しに中を覗くと、小さく丸められた紙が入っているのが見えた。
手に取って瓶の蓋を開け、慎重に紙を取り出すと、そこには達筆な文字で住所と短いメッセージが書かれていた。

「この手紙を見つけた方へ。 私の無事を祈ってください。」

送り主の名前は書かれていなかった。
好奇心に駆られた私は、その住所を調べようとしたが、スマホを使っても正確な場所は特定できなかった。📱

数年後、引っ越しの荷物を整理していると、あの瓶と手紙が出てきた。
懐かしさに浸りながら再び紙を広げると、驚くべきことにその住所が記憶の片隅に引っかかった。

「あ、ここだ。」

数年前に旅行で訪れた小さな港町の景色が蘇った。
波の音、カモメの鳴き声、そして古びた郵便局が目の前に浮かんだ。🌊✨

いてもたってもいられず、その町へ向かうことにした。
現地に着くと、記憶通りの静かな場所が広がっていた。
住所を辿り、小さな家の前で立ち止まる。
ドアをノックすると、年配の女性が顔を出した。

「あの、ここに昔、手紙を投げた方がいませんでしたか?」

女性は少し驚いた表情を見せた後、静かに微笑んだ。

「それは私の息子です。 彼は船乗りでしたが、嵐で行方不明になってしまって…😥 あの手紙を見つけてくださったんですね。」

私は言葉を失った。
手紙の送り主が無事でないことを知り、胸が締め付けられるようだった。
だが、同時に、少しでも彼の思いを届けられたのではないかという安堵感が胸に広がった。
波の音が遠くから響く中、私は静かに手を合わせた。
瓶の中の手紙は、確かに誰かの祈りを繋いでいた。

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