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ひと言小説「黄色い風船」

「少年の記憶」

迷子になったのは、幼い頃の夏祭りだった。🎐

大人たちのざわめきと浴衣の色が渦を巻く中、私は泣きながら立ち尽くしていた。
その時、肩を叩く小さな手があった。

振り向くと、私より少し年下の少年が立っていた。👦
彼は手に鮮やかな黄色い風船を持っていた。

「これ、持ってて。お姉さんを探してあげるから。」
そう言って風船を渡され、手を引かれるまま進む。
少年は迷いなく人混みをかき分け、やがて母の元へと私を届けた。

「ありがとう。」
母の声に、少年は小さく頷き、何も言わずに走り去っていった。

それから何年も経った。
私はとある商店街の古い雑貨店の前で足を止めた。

ショーウィンドウに飾られていたのは、あの時と同じ黄色い風船だった。🎈
記憶の底から、あの日の少年の笑顔がふわりと浮かび上がる。

風船をじっと見つめる私の目元が、少しだけ熱くなった。

彼はどこで、何をしているのだろうか。
風船のように軽やかに消えた少年の姿が、今でも鮮やかに私の中に残っている。

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