
焼き芋フェスの乱🔥
毎年恒例、町内最大のイベント「焼き芋フェスティバル」。
その会場に突如として現れたのは、巨大な鉄板の上に仁王立ちする謎の男――通称“芋奉行”だった。
「今年の焼きはぬるいッ!もっと魂で焼け!」
そう叫ぶと、彼は一斗缶を抱えて鉄板にザバーッと水をかけた。
「おい!何やってんだよ!」
スタッフが慌てて止めに入るも、時すでに遅し。
ジュウゥゥゥ…という音と共に白煙が立ちこめ、会場は一気にパニック状態。
「焼け石に水とはこのことだな…フッ」
芋奉行は満足げに去ろうとするが、煙の向こうから小さな声が響いた。
「…おじさん、それ、うちの芋だよ」
そこには、泣きそうな顔の小学生・カンタが立っていた。
家族で育てたサツマイモをこの日のために持ち込んでいたのだ。
一瞬で空気が凍る。
芋奉行はハッと顔を上げ、カンタにひざまずいた。
「すまぬッ!!」
その瞬間、芋奉行の背後に現れたのは、もう一人の男。
金髪にサングラス、腰には巨大な業務用バーナー。
「水で冷ます?フン、時代は“焼き直し”だぜ」
彼の名は“炎の再焼マン”。
彼のバーナーがうなりを上げると、鉄板の上で奇跡が起こる。
なんと水蒸気で蒸された芋が、しっとりほくほくの理想的な仕上がりに!
「うまい!水をかけたほうが美味しくなってるじゃん!」
観客から歓声が上がる。
芋奉行は震える手で一口食べ、涙を流した。
「これが…真の芋か……」
その後、奉行は「芋道とは、柔と剛の融合である」と語り、焼き芋道場を開設。
再焼マンも弟子入り志願が殺到し、ふたりは一躍“焼き界”の伝説となった。
その日、焼け石に水のはずの事件は、奇跡の焼き芋革命として語り継がれることとなった。
そして芋奉行と再焼マンは、新たな焼き芋コンビとして各地のフェスに現れるという。
「焼け石に、水が必要なときも、あるんだな」 そんな名言を残して――。
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