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ウサギの残業が終わらない夜に働きすぎ社会を笑う小さな革命

森のウサギたちは、今日も走っていた。
昼を過ぎても、夕方になっても、ピョンピョンと跳ねながら、仕事に追われている。

「もう日が暮れるよ」
後輩のミミが言うと、先輩のタロウは笑いながら答えた。
「それでも上司のフクロウ課長がまだ動いてるんだ。帰れるわけないだろ」

森の会社〈キャロット商事〉では、終業ベルが鳴っても誰も立ち上がらない。
それどころか、全員がモニターに向かい、タイピングの音が夜風に混じって響いていた。
どうやら“働きウサギ”とは、この森では褒め言葉らしい。

タロウのデスクには、冷めたハーブティーと人参スナックの袋が積まれている。
「家に帰ってもやることないし」と彼は言い訳のようにつぶやく。
だけどミミは知っていた。
タロウには恋ウサギの彼女がいることを。
彼女は「もう一緒に夕焼けを見よう」と何度も誘っていたのに、タロウはそのたびに「残業で」と断っていた。

時計の針が21時を回ったころ、フクロウ課長が姿を現した。
「おい、まだ終わってないのか?すばらしい勤労精神だな!」
その声に、ウサギたちはぴょこんと耳を立てて姿勢を正す。
もはや反射的だ。
「課長こそ、まだいらっしゃったんですか?」
ミミが恐る恐る尋ねると、フクロウ課長は羽を広げて笑った。
「もちろんだ!夜が本番だからな。皆が頑張っているうちは、私も帰れん!」

その様子を見て、ミミはふと思い出した。
以前、近くの森で「犬が上司になった日」という話題があった。
犬たちは“吠えるより褒める”ことで職場の雰囲気を変えたらしい(👉ペット社会化時代、犬が上司になった日)。
キャロット商事も、そんなふうに変われたらいいのに――。

深夜。森の月が高く昇り、タイピング音が少しずつ減っていく。
だがタロウは手を止めない。
「ミミ、もう帰れ」
「でも、タロウ先輩がいるなら」
「いいから。俺はちょっとだけ片付けがある」
ミミは名残惜しそうにうなずき、カバンを抱えて帰っていった。

静まり返ったオフィスで、タロウは画面を見つめながら深く息を吐く。
ふと気づくと、ディスプレイの端に自分の垂れた耳が映り込んでいた。
かつてピンと立っていた耳が、今ではぐったりと力を失っている。

「……これが働きウサギの末路か」
そう呟いた瞬間、背後から声がした。
「タロウ、まだいたのか」
振り向くと、そこにはフクロウ課長がいた。
しかし、どこか様子が違う。
羽毛は少し乱れ、丸い目もとろんとしている。

「実はな、私も本当は疲れてるんだ」
課長は小さくため息をついた。
「でも、部下が頑張ってるのを見ると帰れなくてな」
「それ、みんな同じですよ」
「そうか。結局、誰も本音を言えないんだな」

ふたりの間に沈黙が落ちた。
やがてフクロウ課長が微笑んだ。
「タロウ、お前が先に帰れ。明日の朝、遅刻してもいい」
「えっ?」
「今日は“早ウサギ日”にしようじゃないか」

その言葉に、タロウの耳がピクリと動いた。
「……課長、それいいですね。新制度にしましょうか」
「いいとも!“残業ゼロ宣言”だ」

翌朝。
森の掲示板に貼り出された新しいポスターには、こう書かれていた。
『ピョンと帰ろう、早ウサギ日!』

それを見たウサギたちは最初こそ笑っていたが、やがて一匹、また一匹と本当に定時で帰り始めた。
「今日の夕焼け、きれいだね」
ミミが言うと、タロウはようやく微笑んだ。
彼の耳は久しぶりにピンと立っていた。

その夜、森の空には月が丸く輝いていた。
働きすぎたウサギたちはようやく気づく。
“速さ”よりも、“休む勇気”のほうが大事だということを。

タロウのスマホには、メッセージアプリ「リスチャット」で届いた通知が光っていた。
――『明日、ピクニック行こう。ウサギ散歩日和だよ』(👉ウサギ散歩日和ふわもこが運んだ恋の風
タロウは小さく笑いながら返信を打った。
「了解。定時で帰る!」

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