
止められた男🃏
出張帰りのビジネスマン・高田修一は、成田空港の税関で足止めを食らっていた。
スーツケースを開けられたわけではない。
税関職員が、手荷物から出てきた“トランプ”をじっと見つめていたのだ。
「これは……国外から持ち込まれた“遊戯物資”ですね」
「え、ただのカードゲームですよ⁉️」
だが職員は、眉一つ動かさず言った。
「トランプ関税がかかります」
「……は?」
一瞬、聞き間違いかと思った。
だが壁にはしっかりと「税関」と書かれたプレート。
職員は続けた。
「このジョーカー、なかなかのレアですね。課税対象です」
「えっ、これ百均で買ったやつなんですけど⁉️」
職員は黙々とポーカーフェイスでカードを確認していく。
スペードのA、クラブのK、そして何よりジョーカーを取り出し、うなずいた。
「ババ抜きは、国際的リスク要因ですから」
修一の隣で見ていた外国人観光客が「ジャパン、アメイジング……」と小声でつぶやく。
周囲からもクスクスと笑いが漏れ始めた。
その瞬間、修一の中の何かが弾けた。
「……じゃあ逆に聞きますけど、この関税、何に使われるんですか⁉️」
「国家トランプ振興基金に寄付されます」
「そんなの聞いたことねえよ!!」
「一部はUNO拡張の研究費にも回されます」
「なんでやねん!!!」
それから数分後――修一はトランプを没収され、レシートのような課税証明書を渡されていた。
【課税対象:ジョーカー×1、スペードのA×1】
【理由:戦略的価値のある遊戯資産】
【関税額:330円】
税関を出る時、後ろの親子が修一を見てこう言った。
「ママ、あの人、なんでトランプに税金かかったの?」
「きっと、運が良すぎたのよ」
そう、“トランプ関税”は運と笑いの境界線で発動する――
いまやSNSでは
《#税関ババ抜き》《#ジョーカー課税》《#国家UNO戦略》がトレンド入り。
修一はというと、トランプが手元から消えた代わりに、伝説の男になったという。
コメント