
進むなら、どこじゃ!
「さあ、進路を選べ!」
校門前の三又交差点。
そこに突如現れたのは、誘導棒を持った謎の男・進導(しんどう)先生だった。
「大学、専門、就職。道は三つ!人生は一度!迷うな、選べ!」
その声に、生徒たちは立ち止まる。
ひとりは進学希望のマコト。
もうひとりは手に職を目指すミユキ。
最後の一人はまだ迷っているケンタ。
「ぼくは……まだ決まってません」
ケンタがうつむくと、進導先生はバシッと誘導棒を掲げた。
「決まってなくていい!大事なのは“今ここで考えること”じゃ!」
突然、上空から光が差し、進導先生の安全ベストが黄金に輝く。
「なんか……神々しい……」ミユキがつぶやく。
進導先生は各方向に立て看板をドン!と指さした。
「大学に行くなら、論理と思考の道を進め!」
「専門に進むなら、手に職と熱意を持て!」
「就職なら、今から社会を知れ!」
マコトは真っ直ぐ大学の道へ走り出す。
ミユキは少し悩んでから専門学校へ。
残されたケンタは進導先生を見つめた。
「先生は……どの道を選んだんですか?」
進導先生は、静かに言った。
「わしは、“進路を見守る道”を選んだのじゃ」
その瞬間、風が吹き、立て看板が一斉に揺れた。
ケンタの表情が変わる。
「ぼく、就職します!でも、働きながら資格もとります!」
進導先生がニヤリと笑う。
「三つの道に正解はない。歩んだ先に意味が生まれるのじゃ」
その日、校門前の三又交差点には、小さな拍手と春の風が吹いた🌸
数日後。
ケンタは町の小さな工場で働き始めていた。
毎朝、制服に着替え、工具を手に持つと、不思議と胸が高鳴る。
ふと、通学路の交差点を通ったとき、あの場所に立っていたのは、
――誰もいなかった。
けれど、そこには確かにあの先生の声が残っていた。
「進む道は、決めたその日から“正解”になる」
ケンタは深く頭を下げた。
ありがとう、進導先生。 そして歩き出す。
自分で選んだ、未来へ向かう道を。
コメント