
頭突きは計画的に💥
「いってぇぇぇぇぇ!!」
マンションの廊下に響き渡るその声は、格闘技界のレジェンド、サガットのものだった。
190cmを超えるその巨体は、ただ歩いていただけで、ドアの上枠にゴンッと激突してしまったのだ。
隣にいたのは、近所に住む小学2年生のカズマくん。
その瞬間を目撃した彼は、腹をかかえて大爆笑していた😂
「サガット、おっきすぎ〜!ドアのこともノックしちゃうの!?」
サガットは悔しそうに頭をさすりながら言った。
「これは…タイガーヘッドクラッシュだ……」
もはや必殺技でもなんでもない。
ただの不注意な頭突きだった。
もともとサガットは、海外での大舞台を終えて日本に帰ってきたばかり。
日本の狭い住環境に慣れておらず、特にこのマンションの低めのドア枠には何度も頭を打っていた。
だが今回は違った。
カズマくんに見られてしまったことで、彼のプライドはズタズタである。
「サガットって、強いだけじゃなくて面白いんだね!YouTuberになれば?」
その言葉に、サガットはハッとする。
“笑いで人の心を動かす”…それもまた、戦いなのではないか?
翌日──。
『サガットの「闘道館」』というチャンネルが誕生した。
第1回の動画は、もちろん例の“頭ゴツン”シーンを再現したコント。
しかも演技ではなく、また本当にぶつけていた。
「本気でぶつける、それが俺の流儀だ」
そんな謎の名言とともに、動画は大バズリ。
コメント欄は「痛そう😂」「タイガーじゃなくてターンバックでしょw」「カズマくんの笑い声に癒された」と賞賛の嵐。
カズマくんはいつの間にか“相棒”として人気に。
二人のコンビは、ジムの紹介や格闘技入門動画も交えて、今や登録者数100万人目前の人気チャンネルに成長していた。
それでも、サガットは言う。
「笑いも、戦いも、油断したら負けなんだ」
そう言ってまた、ドアにぶつかっていた。
サガット。
それは、強さと間抜けのギリギリを歩く、もう一つの格闘技だったのかもしれない。
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