
ナッツを追えば恋がくる!?
渋谷勤務のサラリーマン・俊(しゅん)は、社内で“空気系男子”として有名だった。
会議で意見を求められても、
「ナッツ、いや、特にありません」
と噛み気味に答えて、上司にため息をつかれる日々。
そんな俊の唯一の癒しは、ランチ後に寄る公園のベンチ。
ハトの軍団に混ざって、なぜか毎回リスっぽい生き物が出没するのだ。
「……リス? いや、ハトの新種? もしくは毛深いスズメ?」
俊が目をこすっている間に、その“リスらしきやつ”はアーモンドをくわえて逃げていった。
その瞬間、俊の人生のナッツがカチッとハマった。
「……明日から、俺、リス活する」
ちなみにこの時、俊はまだ知らない。
のちにこの“どんぐり事件”が、ネットで話題になり「うとうとリス 昼下がりの癒し事件簿」として報じられることを──。
次の日、俊はリス探しのために出社時間をずらした。
(※会社には「リスに会いたいので遅れます」とは言っていない)
公園でナッツを撒く俊。
隣では、同じようにナッツをばらまく女性がいた。
「すみません、あなたも……ナッツ撒いてる系の方ですか?」
「え? あ、はい。私、ナツミっていいます」
「ナツミさん!? ナッツみたいな名前!」
「いや、ナッツとは関係ないです!」
俊のテンションはすでにアーモンド並みに香ばしかった。
このときの出会いが、まるで猫カメラ日記にゃんとも映える青春物語のように映えていたことに、ナツミ本人は気づいていない。
それから俊とナツミは、毎朝リス活仲間として公園で再会するようになった。
俊がピーナッツを持ってくると、ナツミはピスタチオ。
二人で撒けば、リスたちが小さな運動会を始める。
「俊さん、リスって実はナッツを埋めて忘れるんですよ」
「俺もクレカの暗証番号、毎回忘れます」
「それただの社会人失格では?」
「でも、ナツミさんの誕生日は忘れません」
「まだ教えてません」
俊のリス活は、もはや“恋リス活”へと進化していた。
会社では「最近テンション高くない?」と噂され、同僚からは「社畜!AIが考えた小説 – ブヒッと出勤🐷」に出てた人?
とまで言われる始末だった。
しかし、ある日公園に行くと、リスがいない。
俊はナッツを握りしめて空を見上げた。
「どんぐりちゃん(※勝手に命名)、俺を置いて冬眠か……」
落ち込む俊を見かねて、ナツミが温かいコーヒーを差し出した。
「俊さん、リスって冬眠する前に食べまくるらしいですよ」
「つまり、今こそ俺たちも食べまくる時期ってことですね」
「それは違うと思います」
そのまま二人は近くのカフェに入り、甘いパンケーキを前に爆笑した。
まるでダイエット挫折ホットケーキは別腹事件の再現だった。
冬の終わり。
久々に公園を訪れた俊の足元に、あの“どんぐりちゃん”が現れた。
口には小さな紙切れ。
よく見ると、それはナツミの名刺だった。
「ナツミさん……リス経由で連絡先渡すタイプか……!」
翌日。
俊がナツミに会うと、彼女は照れながら笑った。
「まさかリスが届けるとは思わなかったけど、まあ結果オーライ?」
「じゃあ今度、正式に“リス活デート”しましょう」
「どこ行くんです?」
「動物園でリスにナッツをあげながら、将来のことを語りましょう」
「いや、それプロポーズみたいな流れじゃないですか!」
ちなみに俊、このあと仕事で書類を10部ミスコピーして、上司に「猫の手も借りたい!AIが考えた小説 – 忙殺オフィスキャットパニック」状態だと叱られたのは、また別の話である。


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