
止まれないウサギの珍騒動
ウサギのラビットは、森で一番忙しい。
忙しすぎて、もはや自分が何に忙しいのかさえわからない。
朝起きてまずするのは、天気予報を倍速で見ること。
もちろん天気なんて聞き終わる前に外へ飛び出すから、雨に降られる確率はほぼ100%だ。
「今日のラッキーカラーは黄色です!」
という声を倍速で聞き流したせいで、
黄色い長靴を無視して普通の靴で水たまりに突っ込む。
靴下はビチャビチャ。
朝からテンション急降下。
「効率こそ人生だ!」
と叫びながら、朝食のニンジンはミキサーで3秒処理。
もはや味も香りも一瞬で消える。
ニンジンだって「ちょっとは味わえ!」と言いたいだろう。
そんなある日、ラビットは走りながらSNSを倍速チェックしていた。
「新機能:倍速より速い“超倍速”」
という文字が目に入り、テンション最高潮でタップする。
画面にはこう書かれていた。
「超倍速を使うと、あなたの人生の時間が2倍に感じられます」
「最高じゃないか!」
迷わず導入ボタンを押した瞬間、世界が猛烈に動き始めた。
空も木々も地面も、全部スライドショーのように流れていく。
目が追いつかない。
「ひゃぁーー!これ速すぎる!」
ラビットは叫んだ。
前方に巨大な影が現れた。
ズズン、と地面が揺れる。
ゾウのエレファントだ。
「危ないよ。そんな走り方じゃ転ぶよ」
のんびりとした声が響く。
「止まりたいんだけど止まれないんだよ!」
ラビットの足は高速で回る洗濯機の靴下状態。
エレファントは長い鼻を伸ばし、ラビットをひょいと持ち上げた。
ようやく世界のスピードが戻った。
「はぁ……死ぬかと思った」
「いやいや、生き急ぎすぎだよ」
エレファントはゆっくり歩き始めた。
その歩幅は大きいのに、速度は驚くほど遅い。
「なんでそんなにゆっくりなの?
それじゃ一日が終わっちゃうよ」
「むしろ、ゆっくり歩けば一日が長く感じる」
エレファントは鼻で木の葉を揺らし、やさしい音を立てる。
ザワ……
風が通り抜ける。
「君の今日、ちゃんと覚えてる?」
その一言に、ラビットは固まった。
今日の朝ごはんも、何を読んだかも思い出せない。
覚えているのは水たまりの冷たさだけ。
そこでふと、昨日のことを思い出した。
急ぎすぎて友達に頼みごとをされた時、「本当に困ってるんだ」と言われたのに、ラビットは「倍速じゃ無理!」と言って走り去ったのだった。
その友達の必死な顔は、まるで猫の手も借りたい!AIが考えた小説 – 忙殺オフィスキャットパニックという物語の主人公のようだった。
胸がズキンと痛む。
さらに、最近森で話題になっているちびっ子リス!AIが考えた小説 – 段ボールに詰めた夢の噂も耳にした。
誰より速く走ることで有名だったリスが、競争をやめてから周囲から愛されるようになったという。
速度ではなく“余白”を選んだリスは、今や森の人気者だ。
「ねぇエレファント。ゆっくり歩くコツ、教えてよ」
「まず深呼吸だよ」
ラビットは吸い込んだ。
空気がゆっくりと肺に満ちていく。
世界がふわりと止まった。
「これが普通のスピードさ」
ラビットは笑った。
その日から、倍速をやめた。
動画は等倍。
読書も等倍。
会話も最後まで聞く。
すると、不思議なことに、
毎日が長く、濃く、そして少し面白くなった。
「急がなくても、一日はちゃんとある」
今日もラビットは散歩をする。
途中で花を眺めたり、風の匂いをかいだり。
時々、エレファントと無駄話をして笑う。
倍速しか知らなかった頃の自分に言いたい。
「お前、何と戦ってたんだ?」
世界は、意外と急がなくても回っているらしい。


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