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パジャマ出勤デーで布団から会社へ直行物語

夢心地で働く日常


「おはようございます!」

そう言って会社に入ってきた佐藤は、どう見ても寝起きだった。
いや、正確に言うなら、寝巻きのまま出勤してきた。
そう、今日は会社が新たに企画した「パジャマ出勤デー」の記念すべき第一日目だったのだ。

最初は冗談のつもりだった。
リモートワークが続いたある日、社員たちがチャットに「もういっそパジャマで出勤したい」と書き込んだのが始まり。
ところが、ノリの良すぎる人事部が「それ、やってみましょう!」と即決してしまった。
こうして世にも珍しいイベントが生まれたのである。


「部長、今日のネクタイ…じゃなくて、そのパジャマ、星柄なんですね」

「おう、嫁に選ばされたんだ。なんか“スター社員”っぽいだろ?」

部長は満面の笑みで胸を張る。
普段なら威圧感のあるスーツ姿なのに、今日はふわふわのパジャマ。
まるでベッドからそのまま会議室に転がり込んだ熊のようだ。

社員たちは最初こそ笑いをこらえていたが、すぐに吹き出した。

「部長、今日は“寝言”じゃなくて“発言”でお願いします!」

「おいおい、俺だって夢心地で働けるんだぞ!」

会議室は笑いの渦に包まれた。


その一方で、密かに期待していた人もいた。
同じ部署の後輩、田中美咲。
彼女は普段クールな雰囲気をまとっているが、今日は意外な格好で現れた。
大きなフード付きの動物パジャマ。

「……田中、それ、クマ?」

「はい。冬はこれが一番あったかいんです」

普段は冷静沈着な彼女が、もふもふのパジャマでちょこんと座っている。
そのギャップに周囲はざわつき、思わず写真を撮る社員が続出した。

「田中さん、今日は“働くクマさん”ですね!」

「……仕事はちゃんとしますから」

頬を赤らめながらパソコンを叩く姿に、佐藤の胸は妙に高鳴っていた。


昼休み。
みんなで社員食堂に向かうと、そこはまるで修学旅行の夜のような光景だった。
チェック柄、キャラクター柄、シルクの高級パジャマまで、各人の「寝るスタイル」が一堂に会する。

「これ、ファッションショーみたいですね」

「いや、どっちかというと“布団展示会”だな」

そんな冗談を言い合いながら、社員たちはカレーライスをすすった。
ただひとつ問題があった。
食後、全員が猛烈に眠気に襲われたのである。

「……パジャマのせいじゃないか?」

「このまま昼寝タイムに突入しそうですね」

結局その日、午後の会議は半分以上が舟をこいでいたという。


しかし、この企画は意外にも評判を呼んだ。
「社員がリラックスして働ける」「意外な一面が見えて面白い」とSNSでも拡散。
気づけば他社からも「うちもやってみたい」という声が寄せられ、ちょっとした社会現象になったのだ。

そして、佐藤にとってはもうひとつの変化があった。
「佐藤さん、来月の“パジャマ出勤デー”、一緒に選びに行きませんか?」

田中美咲が、恥ずかしそうにそう声をかけてきたのだ。
「もちろん! じゃあ今度はペアパジャマでも……」

そう言った瞬間、周囲から「おおー!」と大歓声。
どうやら恋もまた、布団から飛び出してきたらしい。

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