全員“根”がつながってた
「……あれ？いつの間にこんなに根が……」
朝、出社した山本は、フロアを這う奇妙な木の根に気づいた。
それは彼のデスクの下から始まり、営業部、企画部、総務部と各部署の床を縫うように伸びている。
「うち、植物オフィスだったっけ？」
戸惑う山本に、隣の席の佐伯がボソリと呟いた。
「それ、“総務の根回し”らしいよ🌱」
なんとこの根、総務の山下さんが始業前に水やりしていたのだ。
話によると、部署間調整の一環として“根”を張って回るプロジェクトを勝手に始めたらしい。
「企画が機嫌悪いときは、根がしおれるの」
「営業が目標達成した日は根が踊ってる」
はじめはただの悪ふざけかと思われたが、不思議なことに、その“根”が回った部署は必ず業績が上がっていった。
提案書はスムーズに通り、ミスは激減。
部長さえ「なんか空気が良くなった」とニッコリしていた。
ある日、山本はついに聞いてしまった。
「これ、どこが出発点なんですか？」
山下さんは静かに立ち上がり、フロア中央に向かって歩く。
そこには一本の太い根が──誰のデスクの下でもない場所から──天井を突き破り、光を放っていた✨
「これは……」
「社長室直通だよ」
その瞬間、全社員のパソコンに一斉に通知が表示された。
《全社的根回し制度、正式導入決定🌿》
こうして会社は“地に足ついた根回し経営”へと変貌を遂げた。
今では朝礼の代わりに“水やりミーティング”、社内文書には「根の状況：良好」欄が設けられている。
しかもこの根、定期的に“分岐”していき、まだ根が届いていない部署にもそっと忍び寄る。
「最近、やけに風通しがいいな」
と社員たちは言うが、それは根が空調の下まで這っていたからだという説もある🌬
社員たちは語る。
「根回し？うん、うちの命綱です🌳」
「根があるから、ウチはまとまってるんだよね」
今日も総務の根は静かに伸びていく。
気づかれないように、でも確実に、全フロアをつないで──。📌💼
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