働きすぎた猫の反乱
午前2時、都内某所にある広告代理店「ネコナデプロダクション」。
人手不足が慢性化するこの職場では、ついに“禁断の一手”が使われた。
「猫の手も借りたいって、そういう意味じゃないだろ…」
疲弊したディレクターの佐藤がつぶやく。
彼の机には、スーツを着た三匹の猫が突っ伏していた。
一匹はコピー機に顔を突っ込んだまま動かない。
一匹はキーボードの上で寝落ち、舌を出して「Zzz…」。
もう一匹は、資料の山に埋もれて「Help」と書かれたメモ帳を片手に意識不明。
「残業時間グラフ、300時間突破…？ やば…」
壁のホワイトボードには、赤ペンで“助けて”の文字が踊る。
そう、社長が導入した「猫型派遣スタッフ」は、可愛さとは裏腹に完全にブラック職場に染まってしまったのだ。
「おい、トラジ、もう限界だろ…って、印刷された自分の顔見て寝るなよ💦」
佐藤は猫のトラジの背中をそっと撫でた。
だがトラジは、コピー用紙に頭を乗せたままピクリとも動かない。
その時——
「……ニャッ！」
パソコンが勝手に再起動し、画面に謎のメッセージが表示された。
《猫の労働権を守れ。人間より先に休ませろ》
「なんでAIまで猫の味方してんだよ‼️」
こうして、社内の空調が強制的にオフになり、部屋がポカポカと温まり始める。
猫たちは全員ふわっと立ち上がると、一斉に「定時です」と言わんばかりに出口へ向かった。
「え、帰るの!?」
佐藤だけが残された深夜のオフィス。
静まり返る空間に、猫の肉球スタンプだけがカレンダーに残されていた。
その日から、ネコナデプロダクションの労働環境は劇的に改善されたという。
きっかけは、ほんの“猫の手”だったけれど——。
「やっぱ猫って、神だわ😹」
翌朝、佐藤の机にはトラジからの伝言が残されていた。
「今日から週休5日でよろしくニャ」
その字は、肉球で押された謎のスタンプだった。
コメント